アジア選手権決勝・日本×イランのレポート&写真です。
決勝 19:00 日本 1(試合終了)4 IRイラン
観客:5289人
得点経過:13分 ⑲ラティフィ・マジド(イ)1−0、26分 ③タヘリ(イ)2−0、30分 ⑨シャムサエー(イ)3−0、36分 モハマディ(イ)4−0、36分 リカルド比嘉(日)4−1
MVP:⑨シャムサエー、得点王:⑩木暮賢一郎
『持たざるものの敗北』
激闘のあとに待っていたのは耐え難い屈辱だった。
「3…2…1…」!イランサポーターのカウントダウン。そして、終了のブザーが鳴り響いた。瞬間、イランベンチから選手・スタッフがピッチに飛び出した。サポーターから投げ入れられた、大小様々な国旗を手に狂喜乱舞するイランの選手達。木暮が自らの主戦場だった、イランゴール前で立ち尽くす。「祭り」を一端中断し、シャムサエーが歩み寄る。木暮の後頭部に手を当て、ささやくシャムサエー。しかし、やがてイランの歓喜の塊が2人を飲み込み、引き離した。シャムサエーは、木暮の元に戻ろうとしたが、チームメイトがそれを許さない。そして、塊から吐き出された木暮は仲間の待つベンチへ去った。
サッポがうなだれる選手達を前に話す。数秒後、ゆっくり、円陣が出来た。掛け声があって、ゆっくり、円陣が解かれた。何の気休めにもならないことを全員が知っていた。小野、金山はベンチに座って顔を覆った。藤井、川原はその場にしゃがみこんだ。北原、高橋は腰に手を当てて、特大の国旗を手にし、大行進するイラン代表を見つめた。
さっきまで日本の選手達が立っていた表彰台の前に「CHAMPION」のプレートが運び込まれた。壇上に並んだイラン代表の一人一人に、金色のメダルがかけられる。キスしたり、見つめたり、指でなぞってみたり。思い思いの方法でそれを愛でた。中央にキャプテンのヘイダリアンが呼ばれ、カップが渡される。そして、カップが高らかに掲げられた。その左後方に、泣き出しそうな顔の日本代表が見えた。

イランの個が際立った試合だった。もっといえば、シャムサエーという個。今大会のイランはあまりポジションを固定しない、流
動的なチームだった。その中で唯一、ピヴォに留まることが許されたシャムサエーは相手の脅威となっていた。イランはそれまでの試合、シャムサエー、ヘイダリアンを含む1stセットと、2ndセットを交互に使い分け勝ち上がってきたが、この日、シャムサエーの出場時間は倍増した。そして、イラン代表の彼への絶対的な信頼はそのまま、チームの強さとなった。
「(シャムサエーを)警戒しすぎたということはあるかもしれない」。試合後、鈴村は語った。
2分、前線に残ったシャムサエーにパスが渡る。ゴールを背にボールを受けたシャムサエーは、藤井をいとも簡単に交わし、シュートまで持ち込んだ。続く、7分、右サイドでボールを持ったシャムサエーに対峙したのは鈴村。シャムサエーはボールを前に蹴り出したかと思うと、一気に加速。鈴村を抜き去った。この2つのプレーが日本のディフェンス陣に与えたインパクトは強大なものだった。
13分、シャムサエーが左サイドでボールを受けた。日本のディフェンスが二人引きつけられる。すると、シャムサエーはシュートではなく、逆サイドでフリーとなったモスタファにパス。これを決め、イランが先制。シャムサエーは、ベンチの監督に向かって「俺の手柄」と言わんばかりに、自らを何度も指差した。
日本も前半、何度も決定機を作り出した。特に木暮はドリブルにパスにと、積極的な姿勢を見せた。それに、小野、比嘉、藤井らが絡んでいく攻撃は十分得点を予感させるもので、1点ビハインドをそれほど悲観的には感じなかった。
後半序盤、日本は鈴村をシャムサエーにマンマーク気味につけた。しかし、彼を完全に封じることは出来ない。一方、攻撃に転じると③タヘリと④ケシャヴァルズを中心としたイランディフェンスに最後のところでストップされてしまう。1stセットの一員である彼らはシャムサエーとヘイダリアンの影に隠れて目立つことはなかったが、相当な対人能力を持っていた。そして26分。またもやシャムサエーが牙をむく。コーナーキックからを含め、シャムサエーは3本連続してシュートを放つ。そして4本目のシュートが枠を捕らえた。川原が弾いたボールをタヘリが決めて0-2。シャムサエーのゆるぎない自信を感じた得点だった。
追い詰められた日本は残り8分、比嘉をゴレイロにしてパワープレーを開始。イランボールになれば、ハイプレスを仕掛けた。し
かし、30分、藤井がパスをカットされると、シャムサエーのロングシュートは日本の無人のゴールへ。これで0-3。イランの監督が勝利を確信したのか、イランベンチ前から自陣コーナー付近にかけてを両手を広げ駆け抜けた。

直後、日本はパワープレーからこぼれたボールをイランに奪われる。すると、前線へのフィードが鈴村の手に当たってしまう。このプレーで2枚目のイエローを受けた鈴村は退場。日本は一人少ないピンチをなんとか守ったが、イランとしては2分間を消費させたことで御の字だったか。そんな狡猾なボール回しだった。
その後はなかなかボールを保持をさせてもらえなかったという印象だ。ここでも立ちはだかったのはシャムサエー。イランは何度も日本のハイプレスをロングボールで回避した。そして、そのボールをシャムサエーが見事にキープし、時間を稼ぎ、逆にイランにチャンスをもたらした。日本は、残り4分、⑧モハマディにロングシュートを決められ0-4。直後、比嘉がミドルを決めて1点返すが、もはや焼け石に水。その後の反撃も実らず、イランに歓喜が訪れた。
根本的に日本のフットサルがイランに劣っていたとは思わない。むしろ、そのパス回し、連動性からいえば日本の方が高度なそれを展開していた。ただ、日本には確固たる武器がなかった。イランでいうシャムサエーという武器が。それを活かす戦術が。イランはその武器に賭け、勝利を掴んだ。
「もっと自信をもっていけばよかった」。金山は、試合後、静まり返ったミックスゾーンで語った。サッポが何かのやり方、それは人もボール動くフットサルというような根本的なものでなく、確固たるやり方を提示していれば、結果は違っていたのかもしれない。それが、出来なかったのであれば、その武器をこれから作っていけばいい。しかし、日本には木暮、小野、金山、といった武器になりえるような選手がいたのではないか。そう思うと残念でならない。


写真:橋本健
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3位決定戦 17:00 ウズベキスタン 5(試合終了)3 キルギス
観客:3051人
得点経過:11分③マメドフ・アンバル(ウ)1-0、15分⑪ブリエフ・アブドゥラ(ウ)2-0、16分⑪ブリエフ・アブドゥラ(ウ)3-0、27分⑭ペストリヤコフ・アンドレイ(キ)3-1、28分⑨オドゥシェフ・ニコライ(ウ)4-1、29分⑭ペストリヤコフ・アンドレイ(キ)4-2、35分⑦ジェイトバエフ・ヌルジャン(キ)4-3、40分⑪ブリエフ・アブドゥラ(ウ)5-3
『中央アジアの覇権争い』
前日イランに完敗を喫したウズベキスタンと日本にあと一歩と詰め寄って惜敗したキルギスの1戦。大会的には3位決定戦ではあるが、これは中央アジアの覇権を巡る戦いでもあった。
今大会、ウズベキスタンはグループリーグでもイラクに敗戦し後がなくなった状況で、タイのレギュレーションの勘違いというラッキーもあって、辛くもグループリーグを突破するなど、アジアの3番手と目されていた実力に疑問の声が上がりつつあった。対するキルギスは一昨年、昨年と連続してベスト4に入り今大会でもその成長が続いていることを感じさせ、ウズベキスタンにとって代われるところまできていた。
しかし、前の試合内容によってこの試合の立ち上がりは明暗が別れてしまった。
イランとの完敗したことででこの試合に気持ちを切り替えて臨めたウズベキスタンに対してキルギスは「日本との試合で肉体的にも精神的にも疲労していた」(ジェドバエフ・ヌルタジン監督)と言う様に気持ちが乗り切っていない。
それを表すように、日本戦では小野や木暮にピヴォの位置でボールをもらわせないようにパスコースを絞って守っていたが、この試合もそれをやろうという意図は見られるものの半歩、いや一歩寄せが甘く、ウズベキスタンの⑪ブリエフ・アブドゥラにいい形でボールを入れられてしまう。
11分にウズベキスタンは、その⑪ブリエフ・アブドゥラを起点にゴールを奪うと、15分、16分と立て続けに⑪ブリエフ・アブドゥラが得点を決める。いずれもピヴォ当てからの鮮やかなゴールだった。
後半に入ると前半眠っていたキルギスの闘争心に火が付く。25分あたりからパワープレーを開始すると27分にキルギスの至宝⑦ジェイトバエフ・ヌルジャンのシュートパスに⑭ペストリヤコフ・アンドレイが合わせて1点返す。その後、ウズベキスタンに1点返されるが、29分にパワープレーから再び⑭ペストリヤコフ・アンドレイが決め1点差。
ウズベキスタンもこの流れを断ち切るために「本当はイラン戦で試したかった」(シャフカット・アブドゥライモ監督)というリードしている時の時間稼ぎ(ボールポゼッション)のためのパワープレーの策をとる。しかし、前日のイラン戦(この時はリードされた状況)でのパワープレー同様に危なっかしい。あまり時間稼ぎになっていない気が…。そうこうしている内に残り5分。ゴール前の混戦からこぼれてきたボールを⑦ジェイトバエフ・ヌルジャンが強烈なシュートでゴールに突き刺し1点差に詰め寄る。その後もパワープレーで攻め立てるも、攻撃パターンが最後は左サイド奥に陣取る⑭ペストリヤコフ・アンドレイに合わせる形しかないためウズベキスタンにも読まれてしまい苦しい。
そして、残り48秒、一瞬の隙をついてゴレイロのクリアランスをゴール前にするするとあがっていった⑪ブリエフ・アブドゥラがダイレクトで合わせキルギスに止めを刺した。⑪ブリエフ・アブドゥラはハットトリックを決め、そして全得点に絡む大活躍を見せた。ウズベキスタンはなんとか3番手を死守したが、うかうかしていると、キルギス、そしてタジキスタンといったチームに抜かれる可能性は大いにあるだろう。
また、この試合ではゴール前でのエキサイティングなシーンやカウンターの応酬となり会場に詰め掛けた3000人を越す観衆にフットサルの面白さを伝えるような1戦で両チームに惜しみない拍手が送られた。