ブラジルのサンカエターノからお送りするペスカドーラ町田・狩野新選手の「ブラジル日記」。
第2回は、チームメイトとの休日の過ごし方。とんでもないハプニングがあったようです。
みなさんお元気ですか、狩野新です。
さて唐突ですが、僕には仲の良いの兄がいます。兄は今サッカークラブのコーチをしていますが、以前は長い間、ブラジルにサッカー留学をしていたこともあって、いつもサッカーやブラジルの話題が多いのですが、よくブラジルの貧しい人たちの話などもしてくれたので、自分は勝手な想像でブラジルには経済的に恵まれない人ばかりなのだと思っていました。しかし、周りのチームメイトを見れば、みんな僕よりも良い携帯やi-podなどを持っていて、逆に羨ましくなるほど。自分の勝手な思い込みとはいえ、思い描いていた風景と現実とのギャップに驚く日々です。しかし、先日の週末ほどにビックリしたことはなかったんです。
ある週末、チームが完全オフとなったので、実家に帰省するチームメイトの家に泊めてもらうこととなりました。彼の実家はサンカエターノから車で1時間ほど、サンパウロ市内にあるのですが、週末は彼の友だちのチームでサッカーをしようということで、日曜の朝、グラウンドへと出かけました。ところが、着いた先はテレビや映画などでしか見たことのない、「ファベーラ」と呼ばれる貧民窟のド真ん中。久しぶりに11人制サッカーをプレーすることに少し緊張気味の僕を尻目にギャラリーからは、容赦ない冷やかしの声がバシバシ飛んできましたが、プレーで黙らしてやろうと思っていたので、さほど気にはなりませんでした。
ただ、ものすごく気になったのは、審判の服装。Tシャツにハーフパンツ、そしてビーチサンダルという、ものすご〜いラフな格好でした。そして、試合が始まって気づいたのですが、両チームともに全身ブルーのユニホーム! それもちょっとばかり濃いブルーと薄いブルーって。わからんでしょ? しかも、僕らは試合前、白のユニホームだったのに、わざわざ着替えさせられたんですよ。まったく意味不明。
当然、試合が始まったら、みんな選手は文句言いまくり。とくに失点した方のチームはどっちも「わからんよ。誰が味方か敵なのか、わからん!」
そのうえ、何度も両チームからレフェリーにユニホームを着替えさせて欲しいと頼んだのですが、この“ビーサン”レフェリーは
「一度着たんだから、もうアカン、続行」
って……。ムチャクチャでした。
さて、気になる(?)試合内容についてですが、イカつい荒くれ者風のお兄さん方がゴロゴロといるピッチ内では、両足タックルなどの粗っぽいプレーのオンパレードで、もう荒れ放題。だから、中盤のポジションだった僕は足を刈られないよう、限りなく2タッチプレーに務めながらも、サイドチェンジなどのロングパスを何本も通し、幾度かのシュートチャンスを作ったので、最初は“ジャポネ〜ス”と冷やかされていたギャラリーからも応援してもらえるようになりました。スコアは2−2で前半を折り返しです。
迎えた後半、サンカエターノのチームメイト、Lくんがゴールを決め勝ち越しに成功すると、試合はますますヒートアップ。熱くなった試合は後半も残り5分近くなったところで、両チームはひとつのファールについて少し騒然となりました。すると、そこで“ビーサン”審判のレフェリングを非難していた相手選手のひとりが、レフェリーにとんでもない暴言を吐いたのです。
「◎%●×&$#*!(放送禁止用語)」
そしたら、当然両者の間で激しい口ゲンカとなったのですが、次の瞬間、信じられない光景が……。なんと、激昂したレフェリーがものすごいフルスイングで選手に殴りかかったんです。もちろん、近くにいた僕らは慌てて仲裁に入ったのですが、なかなか両者の怒りが収まることはなく大騒ぎですよ。ただし、ようやく事態が一時収拾したころに、ふと気づきました。試合中に暴力を振るった人は即刻退場となりますが、レフェリーが選手を殴ったこの場合、いったい誰が退場になるのか? 本当の答えはわかりませんが、この場合は、審判に殴られた(暴言を吐いた)選手が退場となりました。
こんな大騒ぎの後では、試合続行も不可能かと思ったのですが、せっかくだから最後までやるということに決まったものの、またこれが、残り何分まで経過していたのかわからない、ということで、なぜか残り10分から再開。試合は残り数分で僕らのDFが相手にPKを与えてしまって、結局仲良く3−3で引き分けで終わりました。
試合後には、Lくんのお兄ちゃんの音頭でシュハスコ(ブラジル風の焼肉)パーティが始まり、濃密な週末は終了。…と思いきや、Lくんの家に着いた後にも今度は家族での第2回シュハスコ大会! ということで本当にお腹いっぱいの週末となりました。
本当に日本ではありえない、味わえない貴重な週末を過ごし、とてもいい経験になりました。ただ、また次回のサッカーに誘われているんですけど…。
写真で狩野選手が手にするのは、実際に試合で着用し記念にもらったチームのユニホーム。
胸に入っている大手ビールメーカーのロゴは当然、チームのスポンサーだから、ではありません。そんな遊び心もサッカーを愛する国ならではかも。
注※読者やファンの皆さんに誤解を招かないように、補足説明をさせて頂くと、狩野選
手のチームメイト、L選手は経済的に恵まれない地域の出身ではありません。しかし、
実家がその地域に近い住宅街にあるために、多くの友人がおり、一般的なブラジル人
でも普段は決して踏み入れない地域でも安心して入ることができ、狩野選手も一緒に
いることができるので、決して観光や興味本位でそのような地域に出かけるようなこ
とは避けてください。なお、ブラジルではトップアスリートであっても、オフに親し
い友人や地元の友だちと草サッカーやフットサルを楽しむ、本気でプレーするという
ことがごく当然の過ごし方であることもご理解頂ければと思います。